ここ最近、暗い話題が続いていたけど、今日は、とてもとても良い話。
人生、山あり、谷あり
苦あれば、楽あり、だからね😊
私たちが住んでいる小さな村に、ある若い男性が住んでいる。彼の名前は、ヨハン。30代前半だろうか。
ヨハンはこの標高1500m、人口300人の小さな村で、農場を営んでいる。標高が高く雪も多いこの地域は、寒い時期が長く、6月頃まで霜が降りるので、野菜を育てるにはあまり適していない。だから、彼以外で農業を生業としている人は、周りにはいない。
彼の農場は、そんな村の、更に山の中にある。そこに、ビニールハウスを建て、ほぼ一人で作業をしているヨハン。
彼には他の人と違うところが、もう一つある。
それは、足がない、と言うこと。彼は、両足の膝上から足を切断してしまったので、義足をつけている。
足を切断した理由は、スキーをしている時に雪崩に巻き込まれてしまったためだ。雪崩に巻き込まれた場合、多くのケースで命を落としたり、低酸素脳症になり重い後遺症が残ったりする。それ程、雪崩は危険なのだ。
彼の場合は、両足を失った。
私は、その時の事を何も知らないし、ヨハンの話は人伝にしか聞いたことがないので、詳しいことは良く分からない。
それでも、当時の彼の気持ちを想像すれば、それがどんなに辛い事であったかは、誰にでも分かる。
想像を絶する苦しみと絶望を乗り越えて、彼は今、穏やかに、そして誰よりも前向きに暮らしている。
両足を失った事を嘆くことなく、こんな村で農業なんて無理だと囁かれていても、それでも挑戦し、成し遂げた。不可能を可能にした。
もし、私が彼と同じ境遇だったら、私はそこまで出来るだろうか。足がない事を理由に、出来るかもしれない事にも挑戦しないかもしれない。
本当に尊敬する。
絶対に自分の人生を諦めない。
そんなメッセージを受け取った気がした。
つい先日、マリ君と軽いハイキングがてら、彼の農場に立ち寄った。私は初めて彼の農場を訪れた。一人でやるにはとても広く、段差や傾斜もあり、普通の人でも決して楽な畑ではない。そこで一人、黙々と作業をしているヨハン。
「ボンジュール!」
とマリ君が声を掛ける。マリ君は何度か彼の農場を手伝った事があるので、彼とは友達だ。
仕事の手を休めて、これからのプロジェクトなどを話してくれた。帰り際、年配の男性と入れ違った。すれ違う時に挨拶をして、少し世間話をした。
彼はもう定年退職しており、奥さんを3年前に癌で亡くしたと話してくれた。そして彼は、このヨハンの農場に頻繁に足を運んでいると言う。
「もし僕に息子がいたら、ヨハンみたいな息子が欲しかった。僕には娘しか居ないんだけどね。」
と彼は言う。
「ヨハンは僕の理想だ。本当に尊敬している。僕も彼の様に生きたい。」
と続けた。
その言葉に、私はとても感動してしまった。もう定年退職した年配の男性が、自分の半分も生きていないヨハンの事を、これ程に慕い、尊敬している。
ただ、それだけで、私はとても嬉しくなった。
世界はいつだって美しいのだ。
自分がどこに焦点を当てるかで、世界の見え方が違って来る。自分次第で、世界は美しくも、汚くもなる。
それなら、やっぱり、私は美しい世界を見ていたい。できない事に目を向けるのではなく、できる事に目を向けて、今を精一杯生きたい。
私も、ヨハンの様に生きてみたい、そう思った。